この記事では「コマ割りって難しい!誰か教えて」「構図の取り方が分からないよー」といったあなたにオススメです。
POINT
コマ割りは基本的に読者を意識したルールに従うことが重要です。
- ページ内の段数&コマ数
- 断ち切りコマの使用箇所
- 変形コマの使用回数
- 絵柄と枠線の太さの関係
- 縦コマと横コマの効果
- 「間」の取り方
- 読者の視線誘導
上記の7項目は「読者を意識した」コマ割りの基本です。
◎プロの漫画から「基本をどのように使っているのか」参考にするのはかなり効果あると思いますよ。
基本的な内容が書かれた書籍で学ぶのもいいと思います。
漫画のスキマ―マンガのツボがここにある! (Comickersテクニックブック)
少し内容が難しいですが、プロ漫画家の「菅野 博之」さんが詳しく丁寧に教えてくれています。オススメです。
漫画のコマ割りや構図の決め方
まずはコマ割りの基本を学びましょう。
これは読者を意識するための簡単な「ルール」のようなものなので、すでに感覚で行っているかもしれません。
ルールを守っていればとりあえず安全です(個性を出すためにあえて破る場合もあります)
ページ内の段数&コマ数
◎一般的に見やすいコマ割りは…
- 段数:4段以内
- コマ数:6コマ以内
プロ漫画家の平均コマ数やペイントソフト(CLIP STUDIO)の推奨するコマ割りを参照しています。
◎コマ割り例(CLIP STUDIO テンプレート使用)
4段&6コマのコマ割りです。
これ以上になるとコマが小さくなり、見にくくなります。
ただし、のちに説明する「緩急」をつけたかったり、「間」をとりたい場合などは増やしても問題ないかと思います(セリフがないコマ)。
特に「電子書籍化」が進んだ現代では「スマートフォン」で読む人が増えていきます。
スマートフォンの画面では従来の「雑誌」や「単行本」より絵が小さく見えるため、コマ数は少なくした方が読みやすくなります。
断ち切りコマの使用箇所
◎断ち切りコマを使う理由には大きく分けて二つあります。
- とにかく絵を大きく描きたいとき
- 読み手のリズムに変化をつけたいとき
◎とにかく絵を大きく描きたいとき
基本枠のコマより大きな絵を描くことで迫力を出します。
最近は「スマートフォン」で漫画を読む時代なので断ち切りコマを基本としてコマを割る方が読みやすいかもしれません(プロの漫画家も断ち切りコマをメインに使用している人は多い。お手元の単行本をチェックしよう)
作画例
見せたい絵(上コマ)を断ち切りで描き、その他を小さく描くことで迫力を出しています。
◎読み手のリズムに変化をつけたいとき
少し難しい話しになるのですが…(いきなりでごめんなさい)
コマ割りを部分的に断ち切りにすることで、読み手のリズムや視線の流れを変化させることができます。
つまり「読む時間」をコントロールすることができるのです。
印象的な演出を行いたいのであれば重要だと思います。
読み手の時間をコントロールすることができれば、読者が違和感なく物語に入り込むことができるからです。
◎読み手の時間をコントロールする例としては…
- 特に見てもらいたい絵を印象付ける
- 心を引き付ける演出ができる
- ドキドキさせたり安心させたりできる
- わざと違和感を与えることができる
- 単調なシーンを飽きさせない
などなど…
はっきり言って「細かい」ですし、難しく思うかもしれません(書いている私も上手くできていませんし…)
その他にも、断ち切りと合わせて「間」や「視線誘導」を応用することで、効果を引き立たせることができます。(のちに詳しく説明します)
ただ、ここで言いたいのは読者の目線でみて
ということです。
※ただし、全てに意味を持たせることは難しいので、演出したい場面だけでも意識してみてください。
作画例
左上のコマのみ基本線に合わせて、右コマを印象付けた。
右コマ補足:読者の視線としては「吹き出し」と「男性」から始まり、「擬音」と「女の子」で視線の逃げ場をなくすことで圧迫感を演出している。(背景の鉄格子も視線が通るように配置している)※最後までこの記事を読めばこの補足の意味も分かるようになると思います。
変形コマは使い過ぎないようにしよう
変形コマは使い過ぎると絵面がごちゃごちゃして読みにくくなります。
「なんとなくカッコイイから使う」なんてことはやめましょう。
※プロの漫画家さんの中にはカッコイイ変形コマを多く使う人がいますが、「断ち切りコマ」や「間の取り方」「視線誘導」などのテクニックを使っているため読みやすいのです。
スピード感を出す場面や読者に違和感(めまいなどの体感や心体的な恐怖感)を与えたい場合などのポイントで使用すると効果的です。
作画例
スピード感を出したかったので変形コマだけのコマ割りにしました。(戦闘系の絵は苦手なのであまりスピード感ないですが…)
横長のコマや縦長のコマの使い分け
コマが横と縦のどちらに長いかによって読者に与える印象が変わってきます。
漫画は右から左に読むものなので視線が通る時間や道が違うからです。
基本的には間を取りたい(時間をゆっくりにしたい)場合は横長なコマを使用し、間が必要ない場合は縦長のコマを使えばいいと思います。
作画例
一番上のコマは場面転換なので横長にして時間をゆっくりとしています。
右下のコマは拾う動作(重要ではない動作)のみを伝えたいので縦長にして時間を早めています。
絵柄と枠線の太さ&幅の関係性
イラストなどとは違い、漫画は1ページを「作品」としてとらえるため枠線は絵と同じくらい重要です。
枠線は漫画の読みやすさを決める要素の一部になるので「適当に決めてしまう」なんてことがないようにしましょう。
せっかく上手い絵を描いたとしても、漫画として読みにくければ意味がありませんからね。
枠線の太さを決めよう
通常枠線の太さは「0.7mm前後」といわれています。
なぜ明確に決まっていないのかというと、「主線(キャラクターなどの線)」の太さが人によって違うからです。
主線が細い人は枠線を細くしないと絵が印象に残りにくく、主線が太い人は枠線を太くしないと枠がみえくく(視線が枠を超えてしまうため)読みずらくなってしまいます。
「0.1mm」の差で意外と大きく変わるので自分の絵柄に合った線の太さを研究しましょう。
◎ちなみに私は線が細いので「0.5mm」で枠線を引いています。
枠線の幅(上下左右)を決めよう
枠線の幅はコマの並びのメリハリをつけるため「左右が短く、上下が長く」が基本です。
サイズは自由ですが、物語や読者の「間」をコントロールする基本的な部分になるので注意しましょう。
◎私は好きな漫画本をいくつか参考にして「左右:0.2mm 上下:0.8mm」で枠線を引いています。
2.「間」を取ることで読みやすくなる
おまたせしました!さきほどから何度も出てきていた「間」についてです。
「間を取る」というのは簡単にいうと
- 読者の「時間」を止めて印象つける
- 話しを一旦区切る
- 場面(場所)を転換させる
- キャラクターの感情を表現する
- 読者に違和感を与える
などなど…
使いどころが多く、とても便利なものなのです。
読みやすさに影響する技術なので意識的に使うようにしましょう。
「間」のとり方は大きく分けて2つあります。
「セリフ(吹き出し)のないコマ」を入れる方法と「絵の中に空間を作る」方法です。
「セリフのないコマ」は背景やキャラクターの表情・全く関係のない絵(空など)を入れることで間が生まれます。
作画例
セリフのないコマを入れて話しを区切っています。
「セリフのないコマ」を間に入れることで不穏感を表現しています。
「絵の中に空間を作る方法」はキャラクターなどのメインとなる絵を意図的にずらすことで間を生むことができます。※構図を決める1つのポイントです。
使用例
人物を右に寄せて左上に空間を作ることで視線を逃がし、読む時間(体感時間)をゆっくりにさせています。読む時間がゆっくりになると絵の印象が強くなるのです(パラ読みでも目が止まるような絵になります)。
こんな便利な「間」ですが、1つ注意点があります。
間を取るためにコマ数が多くなり、結果として「ページ数」が増します。
ページ数が増えれば物語の構成に支障が出るため、適度に間を入れることが重要です。
私は間を多く取る漫画(「アイアムアヒーロー」「いぬやしき」「ヴィンランド・サガ」など)が好きなこともあり、ページ数が多くなりがちです。(連載ならいいと思いますが、読み切りだと難しいです)
趣味なので好きなように描いてますが。
3.「視線誘導」で読者を導く
視線誘導については「なんのこと?」と思う人が多いと思います。
知っていても「どうしたらいいかわからない」なんて人もいるはずです。
視線誘導についてはプロでも意識的に行っている人は少ない気がします(感覚でやっている人が多いイメージ)
とても難しい内容なのでこの記事では簡単に要点のみ説明していきたいと思います。(のちに視線誘導のみの記事を作成予定です。私も不完全ですが…)
構図を決めるときに必要な項目なので理解できなくても、知っておくだけで今後に役立つと思います。
視線誘導の特徴
基本的にコマ数が多くなれば、読者の視線(目の動き)が複雑になります。
コマ内にある情報(吹き出し・キャラクター・背景など)を目で追う回数が増えるからです。
この視線を「誘導」してあげることであなたの漫画の読みやすさが決まるのです。
※複雑でカッコいいコマ割りを目指すのであれば必須かと思います。
◎視線誘導する要素の順番
- 吹き出し
- 枠線
- キャラクター
- 背景(効果線含む)
- 擬音
- 余白
以上が視線を誘導しやすい(目がいきやすい)順番です。
場合によって前後しますが、「吹き出し」については誘導する力が強く働きますので配置には一番気をつけてください。
漫画家によっては「吹き出し」から描く人もいるくらい重要です。
作画例
せっかくなので先ほどの画像にざっくりとした誘導線を引きました。
このページは大きなコマがあるのに対して「間」は存在しないので読む時間は早くなると思います。広いのに狭く思える構図をとっているので、「何かしらの違和感が残ればいいな」と思って構成しています。
視線誘導に関してはネームや下書きの時点である程度きめておきましょう。
そうすれば構図に悩むことなく作画ができると思います。
視線誘導は漫画特有の技術なので理解するまで時間がかかると思いますが、意識して漫画を描き続けていれば自然に身についていくはずです。
私もまだまだ未熟ですが「視線誘導」を知るまでと比べると読みやすくなったかなと実感しています。
4.コマ割りや視線誘導を学べる漫画本
難しいコマ割りや視線誘導を学ぶのにおすすめなのはズバリ漫画本です。
実際にプロが描いている本なので当たり前といえば当たり前ですよね。
◎ただし、あくまで「基本技術をどのように使っているか?」の参考程度にしておきましょう。
「コマ割り」の感性(センス)は絵柄と同じように人によって様々です。
あなたの作風にあったコマ割りをしましょう。
◎下記に視線誘導が上手い&大胆な構図を描く漫画をピックアップしておきますのでよかったら参考にしてください。※少年・青年漫画になります。
ちなみに、最近では1話無料や1巻無料がある電子書籍サイトが多いので買わなくても済むかもしれません。
CMでおなじみの【DMM.com 電子書籍】では無料の漫画も多くあり、すべての漫画が1話無料なので試しにみてみると参考になるかと思います。
※2019年3月現在ではオススメする漫画が1巻無料でした(今はどうかわかりません。確認してみてください)
参考にしやすさNo.1
『ゴールデンカムイ』
基本にそった視線誘導が上手い漫画です。大胆な構図も多いのに視線誘導が綺麗なおかげでとても読みやすいです。視線を追いやすいので参考にするにはちょうどいいかなと思います。「間」の取り方も分かりやすく、ストーリーも面白いので試しに読んでみても絶対に損はしないと思います。(グロ注意ですが…)
圧倒的センスの最終形態
『化物語(漫画版)』
圧倒的センスや絵の上手さで有名な「大暮維人 」先生の作品です。超大胆な構図を視線誘導でカバーし、誰もマネできない漫画を描いています。基本的技術にセンスを加えた「コマ割りの最終形態」だと思っています。
※「大暮維人」先生の絵柄を目指すのはいいと思いますが、漫画の描き方を目指すと痛い目にあうと思うので止めた方がいいと思います(はい。私です)。あくまでも参考にしましょう。
計算しつくされた漫画力
『HUNTER×HUNTER』
視線を誘導しているのか分からないくらい自然に誘導しています。コマ割りは一見ベーシックにみえます。しかし、計算しつくされた「コマ割り」や「構図」「擬音」などなど…圧倒的な「漫画力」をとけこませています。単純化された絵柄をみると参考にするのは簡単そうに見えるのですが、実は奥が深いです。
※少年漫画なので分かりやすいコマ割りを行っていますが、すべてが計算しつくされているようで少し怖いくらいです。特に「キメラアント」編からは大胆な構図も多く見られるのでオススメです。
◎最後に、漫画本ではないですが視線誘導の意味がよく分かる書籍
漫画のスキマ―マンガのツボがここにある! (Comickersテクニックブック)
以上が私のおすすめする本になります。
私は参考にしやすい「ゴールデンカムイ」で主に学んでいます(ストーリーも面白い)
オススメした漫画以外でも自分の好きな漫画を研究してみるといいと思います。
5.まとめ
では、まとめていきます。
漫画のコマ割りや構図の決め方は…
- コマ割りの基本を学ぶ
- 「間」を使って読む時間をコントロールする
- 「視線誘導」を意識して構図を決める
- コマ割りや視線誘導は漫画を研究する
どうでしょうか?多分難しい内容だったと思います。
でも、この記事の内容は基本でしかなくまだまだ奥が深いのが漫画です。
気にすれば気にするほど考え込んでしまうので、頭の片隅にいれておくだけでもいいと思います。
創作は楽しむことが一番ですし、結局のところ「ストーリーとキャラクター」がよければ売れます!描いて描いて描きまくりましょう!